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飼育員さんに聞いてみました!加茂水族館で暮らす生き物たちのごはん

「かもすい」の名で知られる鶴岡市立加茂水族館。80種類にもおよぶクラゲの展示種数は世界一を誇り、“クラゲの水族館”として国内外から多くの観光客が訪れています。そんな「かもすい」が、さらに進化すべく、2026(令和8)年度にリニューアルします。休館期間のあいだ、「かもすい」で暮らす生き物たちを支えるために、ガバメントクラウドファンディング®を実施中です。ここで暮らしているクラゲや魚たちは、ふだんどんな暮らしをして何を食べているのでしょうか。加茂水族館の飼育員さんにお聞きしました。

クラゲだけじゃない!加茂水族館のスゴさ

加茂水族館は館内にクラゲの研究所をもち、クラゲの展示種数は世界一として知られています。1万匹のミズクラゲが漂う幻想的な「クラゲドリームシアター」の大水槽の写真を見たことのある人も多いはず。

スゴいのはクラゲだけではありません。ひれあし※も飼育し、体の特徴などについて学べる催しがあります。館内では約300種類の生き物を展示し、庄内の自然を模した水槽には淡水に暮らす魚や庄内浜で見られる魚について知ることができます。一度足を運んでみれば、その展示内容の濃さを実感できることでしょう。

※ひれあしとは、アシカやアザラシなど脚がひれのかたちをしているひれあし類の海獣のこと。

かもすい激動の90年

加茂水族館ができたのは、約90年前の1930(昭和5)年8月。湯野浜と加茂の有志が組合を結成して設置。当時の名称は「山形県水族館」で、現在の加茂水産高校のあたりにありました。その後、戦争が激しくなると閉館して「海洋道場」[青少年の海洋訓練を行う]となりました。戦後、加茂町営で「加茂水族館」として復活。

1930年の加茂水族館(山形県水族館)の館内[所蔵=鶴岡市郷土資料館]

東京オリンピックの年、1964(昭和39)年に移転新築しました(2代目)。開館当時は20万人を超える入場者数で連日大賑わい。水族館なのになんとサル山もありました。

加茂水族館はのちに民営化されましたが、経営不振で閉館。募金や地元住民の助けを借りながら、飼育員が泊まり込みで生き物たちの世話を続けました。1972(昭和47)年に再び開館したものの、全国各地に大型水族館が次々にオープン。アシカショーを始めるなどして集客をねらうも鳴かず飛ばずで、1997(平成9)年入館者数は過去最低の9万人台に落ち込んでしまいました。

どん底にあった加茂水族館。同じ年のある日、飼育員が水槽のなかにいた小さなクラゲを発見します。これを展示をしたところ人気を博し、その後も次々とクラゲの展示種類数を増やしていきました。飼育員の創意と工夫で繁殖を成功させ、2012(平成24年)年にはクラゲ展示種数で世界一に認定されるに至りました。長年、閉館と入場者数の低迷に悩む水族館がとてつもないV字回復を果たしたのです。その2年後にいまの場所に移転新築し、クラゲドリーム館が誕生。現在の加茂水族館の姿になりました(3代目)。

ちなみに、加茂水族館の起死回生の顛末は、前館長の村上龍男さんのブログ「加茂水族館人情ばなし」(2007–2015)をご覧ください。胸アツです。

2026年のリニューアルでさらに進化

現在、クラゲの展示種は80種類。さらに100種類を目指すべく、2026(令和8)年にリニューアルオープンを予定しています。くわえて、クラゲの研究所やレクチャールームなどの機能を移転したり、展示エリアの拡張も予定しています。

リニューアル後 外観イメージ
レクチャールーム
一部展示スペースの拡張

リニューアル工事のために、水族館はしばらくのあいだ臨時休館(2025年11月から翌年3月末予定)をすることになります。お客さんが来なくても、ここで暮らす生き物たちの生活は続きます。そこで必要になるのは、暮らしを維持するための費用。たとえば、水の循環・温度管理などに必要な電気代や光熱水費、餌代などなど……。リニューアルオープンに向けて、命をつないでいかなければなりません。

というわけで、鶴岡市は「ツナグ∞かもすい応援プロジェクト」を立ち上げました! ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングで、かもすいファンの方はもちろん、全国の方からの支援を募っています。

ところで、私たち一般客が展示室で見られるのは、生き物の生活のごく一部。ふだん、かもすいの生き物たちはなにを食べ、飼育員さんたちはどんなお世話をしているのでしょうか。飼育員さんに聞いてみました。

かもすいの生き物たちはなにを食べている?

ひれあしエリア

最初にうかがったのは、アシカやアザラシなどのひれあし類たちのエリア。飼育員の樋口優斗(ひぐち・ゆうと)さんと香焼慶子(こうたく・けいこ)さんが案内してくれました。

──おじゃまします!なにをしているところですか?

樋口さん「これからアシカやアザラシにあげる餌を解凍しているところです。おもにアジ、サバ、サンマですね。海水をかけて解凍したら、大きさごとに魚を分けたり、半分に切ったりします」

─1匹まるまる食べるわけじゃないんですね。

樋口さん「食べやすい形に切ってあげます。個体によっては半分に切るのが嫌いな子もいたりするので、丸ごとであげたりすることもあります。好き嫌いもあるので、魚の種類の組み合わせをホワイトボードに書いて飼育員どうしで共有しています」

─1日に何回くらい食べるんですか?

樋口さん「午前と午後で1回ずつ給餌するのが基本ですが、催しもの(ひれあしの時間)に出る個体は、さらに複数回になります」

─いちばんたくさん食べる子は?

樋口さん「カリフォルニアアシカのてんちゃんですね。加茂水族館のアシカの中で体が一番大きい子です。1日に合計13kgもの魚を食べるんです」

カリフォルニアアシカのてんちゃん

─解凍するだけでも大変そうです。ほかにはどんなお世話を?

香焼さん「給餌のほかに、ステージの掃除も飼育員の日課です。基本的に朝と催し物が終わるごとに、1日に3回は掃除を行います。水道水とデッキブラシを使って、こんな感じジャッジャッと。あ、こうめちゃん(ゴマフアザラシ)が登ってきました」

─水浴びをしている…?

香焼さん「水を飲んでますね。掃除していると、ときどき登ってくるんです。基本的に水分補給は魚で行いますが、暑い日はゼリーや氷をあげることもあります」

─お世話をするなかで大変なことってありますか?

香焼さん「好きな仕事だからあんまり気になりませんが、野外のステージは夏と冬の寒暖の差が大きくなるのが大変ですね。でも、こんなに動物たちと近くで過ごすことはなかなかできることではないので、とてもやりがいを感じますね」

さかなエリア

つづいて案内してもらったのは、魚類の飼育を担当している後藤亮太(ごとう・りょうた)さん。

──これはなんですか?

後藤さん「この餌はサバですね。ひれあしにあげている魚の餌をすこし分けてもらって飼育している魚にあげています。餌やりは基本的に朝と夕の2回ほど。日中だと水が濁ってしまうので」

──魚以外にはどんな餌を?

後藤さん「おもな餌はオキアミですね。業者さんから冷凍のものを購入しています。全体であげる餌の量は決まっていますが、水槽ごとにどれくらいあげるかは決まっていません。魚の様子や食べ塩梅を見ながら、飼育員それぞれの采配で微調整しています。」

──加茂水族館は庄内浜の身近な魚が多いですよね。

後藤さん「展示している魚の7-8割は、地元の漁師さんに採ってもらっているんです。『こんな魚捕まったよ』って、連絡をもらったりして。あ、このカマスは職員が釣ってきたものです。このアオリイカもそうですね。小さなボートがあるので、職員自ら釣った魚を展示することもあります。近場の磯でヤドカリやウミウシ等の小型の生物を採ることもありますよ」

──ほんとうに地場産の生き物が多いですね。あれ、ウミガメは?

後藤さん「ウミガメも地場産といえば地場産ですね(笑)。南方系のあったかい海の生き物なのですが、海流にのって日本海に迷い込んできちゃうことがあるんですね。それで冬の冷たい海水で弱ってしまい庄内に漂着した個体を保護しています。成長したら放流することになりますので、水族館ではあくまで保護として一時的に飼育しているんです」

クラゲエリア

最後に案内していただいたのは、クラゲ担当の佐藤智佳(さとう・ちか)さん。

──クラゲってふだんは何を食べているのでしょうか?

佐藤さん「おもな餌はアルテミアという動物プランクトンです。飼育教材の『おばけえび』やブラインシュリンプという名前でピンとくる人もいるかもしれません。乾燥した卵を購入して、あたたかい海水で孵化させて給餌します。ほかには、より小さい餌としてワムシ(シオミズツボワムシ)をあげています」

オレンジ色のアルテミア

──ほかにはどんな餌がありますか?

佐藤さん「他のクラゲを食べるクラゲもいるので、大水槽で飼育しているミズクラゲのなかから、状態の悪くなったものを他のクラゲに食べさせています。あと、魚を食べるクラゲもいますよ。アジの切り身とか、ゴリとか、シラウオをスーパーで買ってきてあげています。このあいだは小さいワカサギを見つけて、『あ、これクラゲが食べるかも』って買いましたね」

──クラゲのことも考えながら買い物してるんですね!

佐藤さん「業者さんに発注してしまうと量が多すぎてしまうので、市販されているパックのサイズでいろいろな魚の種類を試しています。あとは、自分たちでシキシマフクロアミを湯野浜などで採取して餌にしています」

──給餌のほかに、どんなお世話をしているんですか?

佐藤さん「水槽の掃除やクラゲの育成を日課として行っています。もっとも時間がかかるのがポリプの換水作業ですね。ポリプというのは、一般的に「クラゲ」と呼ばれる前の状態のこと。この果実酒の容器の中にポリプがいます。加茂水族館ではポリプを100種類近く保有しており、1週間かけてすべての種類のポリプの水を交換しています」

非常に小さいポリプを扱う繊細な作業

──この細かく書かれている紙はなんでしょうか?

佐藤さん「これは『ポリプ水換え日誌』です。クラゲが生まれた日、生まれた数、どのタイミングで温度刺激を与えるとクラゲが生まれるのか。どのくらいの期間でクラゲになるのかも記録しています」

──これ、めちゃくちゃ財産ですよね。

佐藤さん「そうですね。どうやったらクラゲが生まれるか、これまで培ったノウハウがここに蓄積されています。こうして、ポリプから生まれたクラゲを大きく育成して、それをお客さんが展示水槽で見ているんですね」

──この棚に容器がびっしりですね。

佐藤さん「ポリプの容器やクラゲを育成している水槽の棚は、もともと2列だったんですが、この10年間でクラゲの種類がどんどん増えて、棚を増築して増築して…もういっぱいになっちゃってます(笑)リニューアルしたら大きな繁殖室に移る予定です」

クラゲの展示、80種類から100種類へ!

佐藤さん「クラゲの繁殖や飼育は、一つひとつの作業はシンプルでも、ここでは種類と数が膨大にあるので、いかに効率的に作業できるかが肝心です。ほんのちょっとの手間でも、それが100回に積み重なると、膨大な時間を要してしまいます」

──飼育員の方の人数も時間も限られていますからね。

佐藤さん「そうですね。だから、ひとりの飼育員のできることを増やすため、新しいことに取り組む時間を生み出すために、現状の飼育のシステムをつねに見直して改善しています。飼育員が新しいことに取り組めるよう、いい意味でラクできることを探している感じですね。クラゲの展示類数を100種類をにするというのは、そのための時間を捻出する飼育の仕組みをつくる、ということも大切なんです」

──ハードなマネジメントの世界です…。

佐藤さん「ポリプの管理は飼育のスタート地点なので、やっぱり神経を使いますね。それに、たんにルーティンで同じこと繰り返すわけではありません。前よりどれくらい大きくなっているか、餌の食べ具合はどれくらいか、この水流で大丈夫か、大きくなっていないのなら何が原因か。そんなことをみんなで考えながら、ずーっとやっていかないといけない」

ポリプを育てる容器がずらりと並ぶ

──緻密な観察と繊細な作業の積み重ねなんですね。

佐藤さん「だからこそ、うまく育成できたときは嬉しいですね。『わー!きれい!』って感じてもらうまでの道のりは、とても長くて大変です。展示しているのは飼育の成果の一部でしかない。でも、その一瞬を見て『クラゲってきれいだな、不思議だな』って思ってもらる場所でありたいですね」

ふるさと納税でかもすいを応援!

というわけで、加茂水族館の飼育員さんに、ふだんのお世話の様子を教えていただきました。地元の住民たちの自発的な活動から始まった加茂水族館。館長や職員の創意と工夫で、加茂水族館の挑戦はこれからも続きます。

休館期間のあいだ、「かもすい」で暮らす生き物たちを支えるためガバメントクラウドファンディング®を実施中です。

ガバメントクラウドファンディング®実施にあわせて、特別な返礼品も登場しました。加茂水族館のプレミアムバックヤードツアーや年間パス3年分(!)がセットになった「カウントダウンパスポートセット」です。他にも、館内のレストランで使える食事券や鶴岡市内の施設で使える宿泊券がセットになったものなど、なんだかもりだくさん。年間パスポート3年分はかもすいに足しげく通うファンの方にはうってつけです!

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