市役所のふるさと納税担当者が伝授する「返礼品の上手な選び方」
魅力的な返礼品や、節税の観点からすっかりおなじみになった「ふるさと納税」。テレビや雑誌、情報サイトでは「還元率」や「お得」といった言葉が飛び交っています。ネット通販とはちょっと違う独特なしくみのなかで、“本当に欲しいもの”を見つけるにはどうしたらよいでしょうか。
ここでは、鶴岡市役所の片隅でふるさと納税を担当する筆者が、5つの「返礼品の上手な選び方」を紹介します。これから初めてふるさと納税をする人も、もっと活用したいと思っている人も、ぜひ参考にしてみてください。
その1 各ポータルサイトの特徴を知ろう
「ポータルサイト(以下、ポータル)」とは、インターネット上で寄附を募集するサイトのこと。ふるさと納税では、こうしたポータルを介して返礼品を検索したり寄附を申し込むことが一般的です。
いまや30以上のポータルが林立し、まさに群雄割拠の様相。さまざまなメリットを競って喧伝しています。そんなわけで、本当に欲しい返礼品と出会うためには、まず各ポータルの特徴を知ることが大切な一歩だといえます。
「たくさんの返礼品のなかからアレコレ選びたい」「ポイントを有効活用したい」「レビューを参考にじっくり吟味したい」。自分の考えや寄附のスタイルに合ったポータルで寄附をすることが大事です。
鶴岡市では、さまざまな寄附のニーズにあわせてポータルの拡充に努めてきました。ここでは鶴岡市が参加する16のポータルを紹介します。独自の返礼品を用意しているポータルもありますので、ぜひご自身で見比べてみてください。
返礼品掲載数や地域の情報が充実した老舗ポータル
ふるさとチョイス
ふるさと納税を代表する老舗サイト。自治体数、返礼品数No.1。楽天ふるさと納税
楽天ポイントが使えるほか、レビューやランキングの情報が充実。ふるなび
「ふるなびコイン」や「ふるなび美食体験」など独自企画が際立つ。さとふる
返礼品の発送予定日や配送状況を「マイページ」で確認できて便利。
各種ポイントや独自の還元企画が特徴のポータル
JRE MALLふるさと納税
鉄道会社が運営し、JREポイントが使える。駅構内でもイベントを実施。au PAY ふるさと納税
通信大手のauが運営し、Pontaポイントでの還元キャンペーンを実施。セゾンのふるさと納税
大手クレジット会社が運営し、永久不滅ポイントが使える。まいふる
イオンカードを利用したポイント還元が特徴。WAON POINTも使える。マイナビふるさと納税
大手ECサイトのギフトカード還元など、独自のキャンペーンを実施。dショッピング ふるさと納税百選
2022年開設の新しいポータル。dポイントが使える。Vふるさと納税
2023年開設の新しいポータル。Vポイント(旧Tポイント)が使える。
独自のコンセプトや特定の分野に特化したポータル
ANAのふるさと納税
航空券と宿泊券がセットになった独自の返礼品を出品。マイルも貯まる。一休.comふるさと納税
大手旅行ECモールと連携した宿泊施設のレビューが参考になる。STAYNAVIふるさと納税
返礼品として宿泊割引クーポンが提供される観光支援の検索サービス。三越伊勢丹ふるさと納税
大手百貨店のバイヤーが選ぶこだわりの返礼品を出品。ポケマルふるさと納税
寄附者と生産者が直接つながる独自の仕組みで運営している。
その2 配送時期をチェックしよう
ふるさと納税では、一般的なECサイトでの買い物(購入)のようなスピード感を期待してはいけません。大手ECサイトのような「翌日配送」はありません。野菜やフルーツといった農作物には、“旬”があり、収穫時期は天候によって左右されます。
そのため、返礼品を選ぶときは、品物のページに記載されている「配送時期」をかならずチェックしましょう。申し込みから数週間で届くものもあれば、「先行予約」など発送まで半年近く掛かるものまで、さまざまです。もし、受け取れない期間があらかじめわかっていれば、備考欄に記入して発送を担当する業者さんにお伝えしておくと安心です。
ちなみに、一度にたくさんの品物が届いても「食べ切れないよ!」「保管する場所がない!」という方には、定期便がおすすめ。とくに、精米したての新鮮なお米が毎月届く「お米の定期便」は、毎日の暮らしに嬉しい人気の返礼品です。
その3 現地に行くなら電子決済を使ってみよう
「買い物で寄附先の自治体に行く予定があるよ」「こんど、旅行で行こうかな」と思っている方には、寄附先の地域で使える「チョイスPay」という選択肢も一考の価値ありです。「ふるさとチョイス」が提供するチョイスPayは、寄附でチャージしたポイントを使って、旅先での食事や宿泊、レジャーなどで「ふるさと納税払い」ができるしくみです。
寄附したその瞬間にポイントがチャージされるので、思い立ったその場でふるさと納税が可能。電子決済の感覚で、手軽にご利用いただけます。返礼品という「モノ」の到着を待つではなく、寄附先の地域のなかで使うという「コト」を通して地域と関われるのも魅力です。
なお、鶴岡市内では、宿泊施設や土産物店など、71の加盟店で「チョイスPay」がご利用いただけます(2024年6月21日現在)。くわしくはこちらへ。
その4 ゆっくり選べるポイントを活用しよう
「そうだ、ふるさと納税しなきゃ!」と思い立ったのが年の瀬。大掃除のさなかに、あわてて控除額の上限を調べて、「とりあえず肉でいっか」と、あまり考えずに返礼品を申し込んじゃった、という経験をした方も多いと思います(かくいう筆者自身です)。
そんなときにおすすめなのが、ポータル独自のポイントやチケットといったしくみです(たとえば、チョイス公式ポイントやふるなびカタログ、さとふるのあとから選べるお礼品など)。希望の自治体への寄附でポイントを貯めて、あとでゆっくりお礼の品に交換できるこの仕組み。自分のタイミングでじっくり返礼品を選ぶことができて、とても便利なんです。ポイントは翌年に持ち越せるので、積み立てて、より高額な品と交換するという使い方もできます。なお、ポータルや自治体によってポイントの有効期限が異なるので、注意が必要です。
その5 生産者のウェブサイトを検索してみよう
最後にちょっとした小ワザ(というほどでもありませんが)をご紹介します。「返礼品名」や「出品事業者名」を、いちど検索エンジンやSNSで検索してみましょう。出品者によっては、ウェブサイトやSNSで積極的に情報発信をしていることがあります。ポータルには載せきれない、農家さんのこだわりや、産地や事業者の知られざる歴史(ストーリー)に出会えるかもしれません。
余談ですが、ポータルでは、EC機能のついた生産事業者のウェブサイトにリンクすることは、原則として禁じられています。ユーザーの取り囲みを図りたいポータルサイトにとって、外部リンクは離脱の契機になってしまうからです(制度本来の趣旨に照らせば疑問に感じます)。であれば、自分から調べに行く。作り手や産地を知れば、より美味しく感じられるはずです。
さて、ここまで「返礼品の上手な選び方5選」をお伝えしました。お店を探し、品物を吟味し、決済方法を選ぶ──。お気づきのとおり、ここで紹介した方法は、じつは日常的な買い物のプロセスとそんなに違いはありません。
だからこそ、返礼品を選ぶ”経験“そのものを楽しんでほしい!というのが、ふるさと納税担当のささやかな願いです。「この地域にはこんな生産者さんがいるんだ!」「生まれ故郷だけど知らない特産品に出会えた!」。ふるさと納税が、そんな思わぬ発見や出会いのきっかけとりなりますように。