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鶴岡産の「朝採れだだちゃ豆」を産直空輸で首都圏へ──収穫から空輸まで密着取材

令和3年8月21日から28日までの期間中、鶴岡市ではANAグループと連携して、鶴岡市産「朝採れだだちゃ豆」を空輸で羽田空港へ送り、その日のうちに首都圏のスーパーで販売するという実証実験がなされました。

陸送では、朝収穫した「だだちゃ豆」をその日のうちに首都圏に届けるのは難しく、売り場に並ぶのは翌日以降というのが通常ですが、それをANAによる空輸と生産者さんの協力により叶えたのが今回の企画。

収穫から航空機への搬入までを密着取材させて頂いたので、レポートしていきたいと思います。



鶴岡の夏の味覚「だだちゃ豆」

「だだちゃ豆」は、鶴岡の在来種。鶴岡市郊外の白山地区を中心に、品種や生産者を限定して作られる、希少性の高い枝豆です。限られた農家さんが、代々その種を引継ぎ、江戸時代から変わらぬ美味しさを守り続けています。

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茶豆の一種で、表面の産毛が茶色く、深くくびれているのが特徴。茹であがりは、とうもろこしのようなふんわりと漂う甘い香り、食べると甘みと旨味が口の中いっぱいに広がります。そんな格別に美味しい枝豆である「だだちゃ豆」は、『日本一の枝豆』や、『枝豆の王様』などと評されています。

普通の枝豆を食べて育ってきた私は、鶴岡に来て初めて「だだちゃ豆」を食べた時、ほくほくとした食味と、まろやかな甘い香りに感動しました。新鮮であればあるほど、その特徴である香りや味わいをより強く感じることが出来るそうです。

地元の人が食べる新鮮な「だだちゃ豆」。是非、同じ味を食べて頂きたい!そんな想いから、ANA便を利用した「産直空輸」で、当日の夕方に首都圏に届けるという試験販売が実施されることになりました。


ANA庄内線に乗せて「産直空輸」で都内に輸送

鶴岡の市街地から車で20分程の距離に、庄内地方の空の玄関口「庄内空港」があります。「朝採れだだちゃ豆」は、この空港から飛行機に乗せて「羽田空港」へと飛び立ち、その後都内のスーパーへと運ばれていきます。

今回、ANAグループが展開している、航空のスピード輸送と地上物流を有機的に連携した「産直空輸」により、野菜・果物を採れたての「鮮度」にこだわって首都圏へ輸送します。これにより、通常、収穫から首都圏スーパーの店頭に並ぶのに2日を要するところ、朝に収穫しただだちゃ豆がその日のうちに首都圏の店頭で販売可能となります。

首都圏においては、「イトーヨーカドー」と大手スーパーの5店舗において8月21日(土)から28日(土)までの期間に販売。JA鶴岡ファーマーズマーケットもんとあ~る、並びに鶴岡ファーマーズから出荷する合計640キロのだだちゃ豆を販売する予定です。(ANA Akindo並びに鶴岡市のプレスリリースより引用)

山形県の鶴岡市で朝に採られた「だだちゃ豆」が、夕方には都内のスーパーに並ぶなんて、なんというスピード感。これはなかなか、すごいことだと思います。是非記録しなければ!ということで、朝の収穫から空港で無事に飛び立つまでの様子を密着取材させて頂きました。


「治五左衛門」の十五代目、石塚さん

今回販売した「朝採れだだちゃ豆」の大部分は「鶴岡ファーマーズ」の生産者さんたちが愛情を込めて作ったものです。「鶴岡ファーマーズ」のメンバーである、枝豆農園「治五左衛門」の十五代目、石塚さんを訪ねました。

石塚 寛一さん

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山形セレクション認定生産者(だだちゃ豆・秘伝・ぼんちゃ豆)、山形県認定「エコファーマー」、日本野菜ソムリエ協会認定「ジュニア野菜ソムリエ」、日本フードアナリスト協会認定「初級フードアナリスト」、その他、多数の資格を所有。食に関わることが好き。

鶴岡市の農家に生まれた寛一さんは、17歳で地元を離れ、アメリカのコロラド州へ語学留学をしました。その時、日本食の美味しさに気づき、価値を感じたそうです。その後大学へ進学して上京した際にも、帰省した時に食べる母の手料理が本当に美味しく感じられたといいます。

「注目されるべき材料や食文化が、ここ鶴岡にはたくさんある!」そう感じた寛一さん。商社で農産加工物の輸出入の仕事を経験した後、鶴岡に戻り就農。十五代目を継ぎました。

現在では、「だだちゃ豆」を県外・海外に発信するだけでなく、「治五左衛門」の枝豆を『究極の枝豆』の地位に押し上げることで、地域の活性化を目指しています。また、地域の食や観光に携わる人々との輪の中で、魅力的な農業の形を作っており、『食の都庄内』を支える若手農家の代表的存在として活躍されています。


AM 4:00 収穫スタート

「だだちゃ豆」農家さんの朝は早く、早朝の4時から収穫が始まります。あたりはまだ暗く、ライトの明かりを頼りに収穫を進めていきます。

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だだちゃ豆の収穫シーズンは、7月下旬から9月の中旬まで。少しでも涼しい明け方に作業を進めます。旨味、甘み、水分が蓄えられた早朝に収穫すると、鮮度の良い状態で輸送できると言われています。

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まずは機械で植えられている「だだちゃ豆」を引き抜き、人の手で束に分けた後、積み重ねて作業場まで運びます。

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この一束でおおよそ10kg程度の重みがあるそうです。足元も不安定な畑の土の上、運ぶだけでも重労働ですね。

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少しずつ明るくなってきました。雲に反射した朝焼けがとても綺麗です。

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この日は曇りでしたが、雨の日でも同様に作業をするそうです。シーズン中は天候に関わらず、早朝からこの収穫作業を毎日行うというのだから驚きです。

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「だだちゃ豆」の特徴である茶色いうぶ毛。実のさやだけでなく、茎全体にも生えてます。枝豆のさやは出荷され、残ったこの茎と葉の部分は、堆肥として発酵させた後、畑の肥料としてまた土に循環されます。

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根も長く立派!根っこの強さは「だだちゃ豆」の美味しい証拠です。

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日が昇り明るくなってきました。今日の分を採り終えるまで、収穫作業は続きます。

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そして同時並行で作業場でも他の部隊が活躍していました。


~AM10:00 洗浄・選別・梱包作業

作業場へ行くと、先ほど収穫された「だだちゃ豆」が既に運ばれてきていました。茎からさやを外し(脱さや)、丁寧に土や泥を落とした後、選別されます。

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実がひと粒のさやは通常の販売用にはならないそうで、加工用に分けられます。その他にも、汚れや割れなどのあるさやを取り除いていきます。素人の私にはわからないくらい厳しい基準で選別されていく枝豆。驚くほどのスピード感で作業が進められています。

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選別の後は袋詰めの作業です。「だだちゃ豆」は呼吸するときに使うエネルギーで旨味や甘みなども消費してしまうそうで、特別な鮮度維持袋に入れられます。見た目は普通の袋ですが、実はこの袋、フィルムのコントロールにより「だだちゃ豆」の呼吸作用を抑えているそうです。

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急激な温度の変化も「だだちゃ豆」の品質低下につながるということで、段ボールではなく保冷剤と共に発泡スチロールに入れて発送します。「だだちゃ豆」はとてもデリケートな野菜。梱包が済んだら、発送業者に引き渡す直前まで、冷蔵庫に入れて保管されます。

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AM10:30 出荷

荷物の集荷車両が到着しました。「だだちゃ豆」が生産者さんの元を離れて、配送業者に引き渡されます。丁寧に手渡しで積み込み、完了です。

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「朝採れだだちゃ豆」がその日の午前中に出荷出来るとは驚きですよね。

農家さんの作業の速さと連携、計画力に驚きました。農園「治五左衛門」では、この日だけでも30人以上のスタッフが活躍していました。美味しいお野菜を作り出す農家の方々、そしてスタッフの皆さまには本当に頭が下がります。

早朝から対応して頂いた石塚さんに感謝を伝え、出荷された「朝採れだだちゃ豆」を追いかける形で、庄内空港に向かいました。


AM11:00 庄内空港到着・積み込み作業

「朝採れだだちゃ豆」が庄内空港に到着しました。ANAの皆さまの邪魔にならないよう、最大限、気を付けながら取材を続けます。

空港に届いた「だだちゃ豆」は、中身の検査や重量の確認など、飛行機に乗せるための準備が進められていきます。厳重な検査の後、荷物専用のコンテナで飛行機まで運ばれます。

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飛行機への積み込みも確認。「朝採れだだちゃ豆」がベルトコンベアーで流れ、飛行機の中に入っていきます。ANAの方々の荷物の扱いがとても丁寧で、これならデリケートな「だだちゃ豆」でも安心です。

※注 今回、荷物の搬入は、ベルトコンベアーで機体後方の貨物スペースへ。搬入方法と積載場所は機体により異なります。

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積み込みが終了し、とうとう飛び立つのを待つのみとなりました。


PM1:00 庄内空港から羽田空港へ

屋上の送迎デッキへ移動。ここは見送りの方や、見学者など誰でも利用できる場所です。飛行機や滑走路の全体を間近で見ることが出来ます。

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いよいよ、「朝採れだだちゃ豆」をのせた飛行機が飛び立ちます。徐々に小さくなっていく飛行機。無事東京に辿りつきますように。


「朝採れだだちゃ豆」販売開始

私の取材はここまでですが、この後「だだちゃ豆は」14時に羽田空港に到着し、車に積み替えられ販売店舗へと送られます。こうして16時頃には、都内スーパーの店頭に並べられました。

イトーヨーカドー写真_修正版_鈴木

販売時の写真をお借りしました。「朝採れだだちゃ豆」はカップ売りのタイプもあったそうです。

首都圏の皆さまに、この美味しさが届いたと思うと嬉しい限りです。

さいごに

取材後、たまらなく「朝採れだだちゃ豆」が食べたくなったので、私も「治五左衛門」の「だだちゃ豆」を頂きました。優しい甘みが癖になる、幸せの味です。

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今回の企画は動画にもまとめられていますので、下記の鶴岡市公式youtubeチャンネルからご覧ください。「治五左衛門」石塚さんのインタビューで構成されていて、生産者さんの想いを感じて頂けると思います。


それでは、最後までお読み頂き、ありがとうございました。

(写真・文 すずき まき)



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