〈つや姫〉誕生の地を訪ねました──水田農業研究所
鶴岡市のふるさと納税では、今年度の新米予約がスタートしました。これに伴い、「鶴岡のお米についてもっと知りたい!」と思い立ち、鶴岡市藤島地区の「山形県農業総合研究センター水田農業研究所」を訪ねました。
この研究所では、お米の品種改良や、栽培技術の開発を行っていて、なんと「つや姫」や「雪若丸」「はえぬき」といった、人気銘柄の誕生の地でもあります。
今回、鶴岡市ふるさと納税スタッフの取材を快諾して頂き、所長の中場さんから、沢山のお話を聞くことが出来たので、学んだ内容をみなさんにもシェアしていきたいと思います。
「山形県農業総合研究センター水田農業研究所」とは
「山形県農業総合研究センター水田農業研究所」は、大正9年に鶴岡市に創立され、100年以上も続く研究所です。設立当初から水稲農業の研究を行っていて、県内では唯一、稲の品種開発にも取り組んでいます。
研究の対象となるのは、「つや姫」や「はえぬき」といったごはん用のお米の他にも、日本酒を造る酒米、もち米、家畜のえさとなる飼料用米など多岐にわたり、ひとくちに「お米」と言っても用途は様々。お米の使用目的ごとに品種を作り分けているそうです。
その他にも、「その品種の美味しさを最大限に引き出す栽培方法」「温暖化に対応する作り方」「いかにコストを下げて栽培できるか」など、身近な課題にも取り組んでいます。
「山形県農業総合研究センター水田農業研究所」の皆さまは、いわばお米作りのプロ集団。稲作についての知識が集結した研究所で、お米にまつわる疑問を解決していきたいと思います。
鶴岡市が、お米作りに適している理由は?
山形県内の中でも、鶴岡市は作付面積が県内一、東北地方でもトップクラスでお米作りが盛んな土地です。では一体なぜなのか?その理由を聞いてみると、3つのワケがありました。
①気候条件
東北地方の稲作は、青森で2300年前には始まっていることが確認されており、ながい歴史があるそうですが、太平洋側は夏に冷害が多く、いかにこれを克服するかが課題でした。鶴岡市は日本海に面し、出羽三山によって東からの風が遮られるので冷害が起こりにくく、台風による被害も少ない点が稲作に向いているそうです。
②立地条件
鶴岡市は、広大な庄内平野の南西部に位置し、高低差がないため田んぼが作りやすく、田植えなどの作業に向いています。内陸だと水源が限られているのに比べ、鶴岡市には赤川をはじめ、たくさんの川が流れているので、水の心配がないことも大きな利点になります。また、土壌についても栄養が豊富で、水田に向いていることが分かっています。
③篤農家と研究者
鶴岡市では、古くから沢山の篤農家※の方々が、自ら品種の開発を行い、九州から技術者を呼びよせたり、鶴岡出身の研究者がいる国の試験場まで行って技術を学ぶなど、魂を注いだ研究を続けてきました。鶴岡市でお米作りが盛んになったのは、先人たちの努力の賜物ともいえます。
好条件に恵まれた上、農家の方々、そして研究者の稲作にかける想いが重なり、美味しいお米がつくられているんですね。
味わいの違いが知りたい!
こうした背景のもと、鶴岡市で作られるお米。やはりその味わいが気になるところですよね。代表銘柄それぞれの特徴について、紐解いていきたいと思います。
粘りと硬さで好みを選ぼう
どんなご飯が好きですか?と聞かれて、「かため」「やわらかめ」など、粒感で選ぶ方も多いと思います。山形県産米の中でも、品種により大きな違いがあります。まずはこちらの表を見て、好みを探してみてください。
この中でも、鶴岡市民が日常的によく食べるのが「はえぬき」「つや姫」「雪若丸」の3品種。それぞれの特徴についても学びました。
生産量No.1 「はえぬき」
コストパフォーマンスの高さと、安定した美味しさで親しまれている「はえぬき」。「コシヒカリ」の孫であり、父は「あきたこまち」という、全国的人気銘柄の系譜を引いたお米です。
「はえぬき」は来年、記念すべき30周年を迎えますが、交配は40年前。「はえぬき」が作られた頃、食生活に変化が起こり、それまで1日3食お米(ご飯)を食べていたのが1日1食しかお米を食べない人が増え、インパクトのあるお米が求められるようになったことを背景に開発されました。
消費者のみなさんの知名度がそれほど高くないという理由で、比較的安価ではありますが、味には定評があり、満足感の高いお米だと思います。冷めても美味しく、大手コンビニのおにぎりや、かっぱ寿司の酢飯としても採用されていて、「はえぬき」の存在を知らない方も一度は口にしたことがあるかもしれません。
ふっくら、粒ぞろい、インパクトがありながら、毎日食べても飽きないバランスの良さ、冷めても美味しく食べられる、などの特徴で鶴岡では日常使いの家庭米として親しまれています。
お米の旨味にこだわりたい方に「つや姫」
続いて紹介するのは、上品な高級米として、平成22年にデビューした「つや姫」。白く輝き、甘みと旨味があり、炊き上がりの香りが良く、ひと粒ひと粒の際立ちが違います。少し高価であっても、美味しいお米を食べたいという方におすすめです。
「つや姫」を名乗れるのは、高い基準をクリアしたお米のみで、「有機栽培米」と「特別栽培米」に限定されます。品質保持のために、山形県独自の出荷基準を設け、タンパク質の含有量が6.4%以下であることを確認したうえで出荷されているそうです。
更に、「つや姫」の生産者は一定の要件をクリアし、山形県知事の認定を受けた農家に限定されていて、高品質を保つ生産を徹底しています。
日本各地の料亭でも採用されている、「つや姫」。京都・祇園の老舗料亭「菊乃井」のご主人である吉田吉弘氏もコメントを寄せています。
個人的には、はじめて「つや姫」の新米を食べた時、その美味しさに驚いた経験があります。せっかく食べるなら美味しいものが良いと思い、鶴岡に越してきてからは「つや姫」が我が家の定番になりました。是非、全国のみなさんに食べてもらいたいと思います。
「つや姫」の弟分「雪若丸」
「山形から元気なお米」をキャッチフレーズに、平成30年にデビューした「雪若丸」。「はえぬき」の孫で、「つや姫」の弟分として開発されました。
既に人気の高い銘柄である「はえぬき」「つや姫」と共存できる❝新食感❞がが売りの「雪若丸」。しっかりとした粒感と適度な粘りが両立していて、噛みごたえ、弾力があります。県内外の人気銘柄と比較しても、このバランスはこれまでにはない傾向で、新しいお米ならではの特徴といえます。
俳優の田中圭さんがイメージキャラクターをつとめていて、一度はCMを見たことがある方も多いのではないでしょうか。「雪若丸」のイメージはわんぱく、元気など、どれもお米としては新しい切り口ですよね。「雪若丸」のブランドコンセプトを読むと、その味わいが想像できるので紹介したいと思います。
「雪若丸」はそのまま食べても美味しいですが、カレーや丼物、チャーハン、卵かけご飯などの用途にもお勧めのお米だということです。公式Instagramでも、アレンジレシピが紹介されているので是非ご覧ください。
また、「つや姫」「雪若丸」それぞれの味わいについて、より詳しく知りたい方は公式HPをご覧ください。
白米・玄米・無洗米、どれにしようかな?
お米を購入する際に、白米、玄米、無洗米、どれを選ぶべきか迷うことがありますが、お米のプロは、どう考えているのでしょうか?見解を聞いてみました。
まず定番の白米。「美味しく食べるためのお米」なので、基本的に味わいで選ぶとすれば、白米が良いそうです。玄米については「健康食」と捉え、味わいというよりも栄養面を気にする方にはお勧めできるとのことでした。
無洗米は、精米の時に白米の表面に残るヌカを取り除いたお米のことで、研がずに炊くことができるのが一番の魅力です。忙しい現代のライフスタイルに合っていると言えるのかもしれません。無洗米には、「乾式無洗米」と「湿式無洗米」があり、乾式無洗米は、米粒をこすり合わせてヌカを取り除く製法だそうで、最初の水は少し濁りますが、そのまま炊いても問題ないといいます。無洗米だからといって、「浸した水が白くならない」というわけではないことを学びました。
ライフスタイルや好みに合わせて、白米・玄米・無洗米を使い分けるとよさそうですね。
さいごに
今回は「山形県農業総合研究センター水田農業研究所」にて、所長の中場さんから学んだことを元に、このnoteを書きました。
中場さんは、『稲作は日本で2000年以上も続いていて、同じ水田で、同じお米を毎年栽培しても病気になったりしないなど連作障害がないことがサステナビリティの観点から見ても評価できる。』と話してくださいました。また、田んぼはダム機能を持っていて、地下水の量を安定させたり、水を貯めて洪水を防いでいるという側面もあるそうです。
田んぼがあることで、美味しいお米を食すことが出来、ダム機能でその土地を守り、良い循環が生まれていることを知りました。お米はこの土地で古くから主食として愛され、私たち日本人の体質に合っている食材だと思います。
ライフスタイルの変化で、日本人のお米離れが進んでいるともいわれていますが、『こんなに美味しいお米を食べないなんて勿体ない!』と思う程、鶴岡のお米は美味しいので、是非みなさんにも食べて欲しいと思います。
鶴岡市ふるさと納税の新米予約はこちらからご覧ください。